末っ子長男、姉三人

  末っ子長男姉三人、こういう家族構成のところで親父さんが死んで、相続税の申告の依頼を受けると逃げ出したくなる。円満な遺産分けは絶望的だからだ。


 最近の日本の女は強くなった。アテネオリンピックでもそれが世界に証明された。体力も根性も世界一である。ある雑誌によると日本の女は美しくて優しく世界一人気があるそうだ。それに体力と根性が備わったのだからたまらない。それにひきかえ日本の男の人気はスーダンの次で27番目だ。


 日本の女たちはいつの日か一斉に気づくかもしれない。日本の男たちは見映えが悪いうえに意気地なしで頼りない。ヨン様の方が素敵!などと言って韓国へ移住するかもしれない。日本の男たちはいつか女たちからバカにされる時代がやってくるだろう。そのような兆候はすでに末っ子長男姉三人という家族構成の家庭で現れている。


 日本ではいまだに家督相続の雰囲気が残っている。だから長男は跡継ぎとして、できる限りたくさん相続したいと主張する。……が、しかし、姉たちにはこんな理屈は通用しない「長男だからって、どうしてたくさん相続するのよ!」と一蹴だ。


 このとき、末っ子長男の嫁が「あなた!ちゃんとしなさいよ!私たちが両親の面倒を見てきたのよ。お姉さんたちのいいなりにならないでよ!」と夫婦喧嘩が始まる。
 嫁さんから尻をたたかれた末っ子長男はやっと立ち上がるが、まるで迫力がない。最初から姉たちにバカにされているので勝負にならない。オギャーと生まれたときから姉たちのペットのような存在であったので「跡取り」というような権威もヘチマもない。


 そうして末っ子長男は「チクショーチクショー」と叫びながら夕映えの砂浜を走るか、誰もいない公園のブランコにひとり揺られながらハーモニカを吹くかだ。末っ子長男は闘わずして退場だ。そのあとを引き継いで末っ子長男の嫁が姉三人とバトルを始める。これが相続争いの第二ラウンドだ。女の闘い。これがけっこう迫力があるのだ。お母さんがオロオロして親戚のオジさんに仲裁を頼むのだが、この親戚のオジさんがまるで頼りにならない。


 オジさんは、末っ子長男に「ハーモニカを吹いている場合ではないだろ!」と言ってはみるが、姉たちには怖くて一言も忠告する勇気がない。いない方がマシだ。「部外者は黙ってなさいよ!」と言われておしまいである。


 末っ子長男の嫁は「私たちが今まで両親の面倒をみてきた苦労を少しは考えてちょうだい!」と叫ぶが、姉たちから鼻であしらわれる。「面倒を見た面倒を見たって、恩着せがましく言わないでよ!お母さんはいつも泣いてたわよ、もっと大事にして欲しいって」。 遺産争いは女の舞台である。男の出る幕はない。


(注)以上はすべてフィクションである。税理士には守秘義務があるので、本当のことを書くわけにはいかないのだよ。


 遺産争いの震源地はいつも女だ。こういう事例は掃いて捨てるほどある。これ以上書くとジェンダー・コードに引っかかるのでこのへんでやめにする。