お前は、いったいどっちの味方なんだ!

 「お前は、いったいどっちの味方なんだ!」と怒鳴りつけてやりたくなりました。とAさんは憤懣やるかたない。「税務調査で、うちの顧問税理士ときたら、税務署員と一緒になって私を責め立てるんですよ」「私の経理処理が間違っていたのですが、事前に顧問税理士に相談していたのです。それなのに税務調査では、税理士は、自分は何も知らなかった、というような白々しい顔をして税務署員と一緒に私を責め立てるのだから、あきれて開いた口が塞がりませんでした」「毎月、高い顧問料を払っていたのに、飼い犬に手を噛まれる、とはこのことです」「誰か他にいい税理士さんを紹介していただけませんか?」(私は法人の経理顧問はしていないので、頼まれても引き受けない)


 税務調査では税理士の人間性が試される。税理士を解任することになるケースで最も多いのが、税務調査での税理士の卑怯な態度である。こういうケースは珍しいのかというと、そうでもない。よく聞く話なのだ。
 税理士は税務署から常に監督されている。税務署に税理士を監督する部門があるのだ。これがプレッシャーとなり、過剰反応して税務署に従順になろうとする税理士がでてくる。このような税理士と付き合うとお金をドブに捨てるようなものだ。


 税理士に限らず今では日本人のほとんどが「自己保身」と「責任回避」に汲々としている。政治家も役人も、どいつもこいつも責任を取ろうとせず逃げ回っているではないか。脅えながら責任逃れのためだけの仕事をしているのだ。こういう風潮が閉塞感を生み出す原因になっている。
 若い連中がこういう大人たちの行動に幻滅し、言うことを聞かなくなる。「なぁ、夜中にコンビニのまわりでうんこ坐りしている君たち!」「そんなに金が欲しいのか。そんなに今の仕事にしがみついていたいのか。そんなに責任を取るのが怖いのか。そんなに長生きしたいのか。脅えながら生きていて楽しいか、え?」
エラソーな顔をしている大人たちにそう言ってやれ!


 私は士(サムライ)業に最も必要な資質は「義侠心」であると思っている。
「任侠道」という試験科目があってよい。強きをくじき弱きを助ける心意気だ。特に役人には必須科目にすべきだ。
 勘違いしないでほしいが、私は右翼でも国粋主義者でもない。「義侠心」という言葉が前時代的で違和感があるのであれば「ノブレス・オブリージュ」でも何でもよい。
 お金や名誉をあきらめれば義侠心が湧いてくる。なぜなら、それしか仕事をやる動機がなくなるからだ。だから士(サムライ)業で生計を立てる者は、お金儲けをあきらめることだ。そうすると「お上」と闘うのも苦にならない。もともと失うものがないのだから。
 かつての「金持ち父さん、貧乏父さん」というくだらない本に、士業は儲からない職業と書いてあったが、儲けてはいけないのだ。儲けようとするから卑怯者のサムライが生まれお客さんを幻滅させるのだ。