モンゴルの人々

(Q)モンゴル人とはどんな人たちですか?


(A)作家の司馬遼太郎によれば「奇跡的なほどに欲望少なく生きて」きた民族とあります。なにしろ移動式住居のゲル(フェルトの天幕)は紀元前から変わることなく、さらには紀元前から飲み続けている馬乳酒をいまなお飲んでいるのです。進歩がないと言えばそれまでですが、進歩と引き換えに大事なものをなくしてしまったと喪失感を抱いている日本人から見ると羨ましくもあります。


 土地についての所有欲は信じがたいほど薄いと思います。「なぜ、農耕の民は土地に執着するのか」と彼らにとっては土地に執着する気持ちが奇怪、かつ、不思議で理解できないはずです。それは地平線まで見えるモンゴル草原で馬に乗ってみると分かります。馬上ゆたかに、地上を這いずり回っている農耕民を見下ろすと土地の境界争いなどをしている連中がつくづくバカに見えることでしょう。2003年5月からモンゴルでは土地所有の法律が施行されたそうですが、いまだに個人が土地を所有するという意味が理解できないそうです。私は「土地所有の意味が理解できない」という話を聞いて嬉しくなってしまいました。それが正常なのです。土地を小間切れにして個人のものとする考え方の方が異常なのですから。日本人とそっくりの顔をしていても、そこいらのメンタリティーは正反対です。


 遊牧民は物を貯えません。不必要に多量な什器や衣類を持てば移動の邪魔になるからです。代々このような生活をしてきたので、物を欲しがる心が削ぎ落とされたのでしょう。日本人の家屋の中は物であふれかえっていますが、不必要な物を持たないという生活態度は見習うと良いと思います。そのためには毎年、引っ越しすることです。そうすれば自然と不必要な物は持たなくなります。分不相応な大きな家を所有すると不必要な物であふれかえるゴミ貯めの家になるだけです。モンゴル人のようにシンプルにならないといけません。


 さらにモンゴルの人たちは開放的で客好きです。外出中もゲルに鍵をかけることはありません。それどころか、いつ客人が入ってきても食事ができるように、お客用の馬乳酒やチーズが準備されているのです。


 それと印象的だったのはモンゴルの子供たちのはち切れそうな笑顔です。モンゴルの子供たちの豊かな表情に接すると日本の子供たちの表情の乏しさは不気味ですらあります。これは昨年、インドでも感じたことです。目をそむけたくなるような貧乏な家庭の子供たちでもその表情は日本の子供たちよりはるかに豊かです。