モンゴルの乗馬

(Q)花村さんはモンゴルで乗馬体験されたそうですね。


(A)モンゴルに行ったら何はともあれ馬に乗ることです。馬に乗らないモンゴル旅行は“クリープを入れないコーヒー”のようなものです。


 ただし、日本の遊園地の乗馬とはわけが違いますから、“それなりの覚悟”は必要です。一人ひとりにそれぞれ介添え役がつくことはありません。下手をすると馬が暴走して振り落とされることもあり得ます。


 モンゴルの馬の特徴は小さくてタフでおとなしいことです。おとなしいとは言っても馬にもそれぞれ個性があります。私は運悪く気性の荒い馬に当たってしまいました。馬を選ぶときは自分で選ぶことができます。私は慎重に、おとなしい馬を選んだつもりだったのですが、“馬は見かけによりません”。


 馬の鞍にまたがったとき私はすごくコーフンしてしまいました。怖くてコーフンしたのではありません。血が騒いだのです。なぜか気分が猛々しくなってしまったのです。すぐにでも馬を走らせて草原を駈け抜けて行きたくなったのです。車のハンドルを握ったとたん、人格が変わるヤツがいるでしょ。あれです。私の場合、それが馬だったのです。きっと、私の前世はモンゴルの騎馬民族だったに違いありません。


 草原には所々にネズミが掘った穴があります。その穴に私が乗った馬が足を取られて倒れそうになりました。それがきっかけで馬が暴走を始めてしまいました。私のコーフンが馬に伝わったのか、どこまでも暴走するのです。「おい、どこまで走るんや!こら〜っ!止まらんかい!このまま行ったらゴビ砂漠やんけぇ!な、頼む、止まってくれぇ〜っ」と心の中で叫んでいたところ、10歳くらいのモンゴルの少年が馬に乗って来て助けてくれました。


 でも、暴走してくれてありがとうと言いたいくらいです。ゆっくり歩いているときより、走っているときの方がはるかに気持ちが良く、バランスも取りやすいので爽快です。それにモンゴルの大草原は障害物もなくどこまで行っても地平線が見えますので、暴走しても恐怖感は感じません。恐怖感どころか刀でも持っていたら振り回していたことでしょう。馬に乗って走っていると「汚らしい農民どもよ!蹴散らしてやる!」という猛々しい気分になってしまいます。私が日本で馬に乗ったら、きっと、お百姓さんを襲撃してしまうことでしょう。馬に乗って高い視線で見下ろすとそんな気分になるのです。チンギス・ハーンもきっとこんな気分だったに違いありません。


 乗馬は半日乗り放題です。馬から下りたときは膝はガクガク、ケツの皮は擦りむけてパンツは血に滲んでいました。それでも満足感はたとえようもありません。試しにラクダにも乗りましたが、爽快感がまるで違います。ラクダの背は高いので見下ろす気分は良いのですが、ゆらゆら揺れるので酔ってしまいます。“乗り物酔い”です。乗るならやはり馬です。それに馬は美しい。ラクダとは比べものになりません。


 毎夏モンゴルに行きたくなりました。ゲルは6万円で買えるそうです。土地はタダですから、花村会計事務所のモンゴル支店へ出張とごまかして“夏はモンゴルで避暑”とシャレ込むな〜んて素晴しいと思いませんか?。