モンゴルの羊

(Q)せっかくモンゴルへ行かれたのですから、もう少しモンゴルの話を聞かせてください。モンゴルでは今でも遊牧しながら生計を立てているのですか?それと旅行中は羊料理がメインですか?


(A)ヤギと羊の放牧はどこでも見ることができます。ヤギと羊はいつも一緒に群れをなしています。羊は臆病なのでヤギの先導なしにはどこにも行けません。羊は群れから離れるとうろたえてしまいパニック状態になります。臆病で群れていなければ何もできないという様子を見ていると、まるで日本人を見ているような気分になります。“群れ”という字の中に羊という文字が使われているのは、なるほど、と感心しました。仲間はずれになるのを異常に怖がる日本人はまるで羊のようです。
 明治時代に日本を訪れた外国人が日本人を見て、あまりの従順さに「この国の連中は牧羊犬5匹でコントロールできる」と言ったそうです。
 日本で政治家や企業経営者など組織のリーダーになりたいのであれば、モンゴルへ行って、牧羊の経験を積むと良いかも知れません。


 羊料理のため、羊の解体を一部始終見せてもらえることができました。羊の解体を間近で見ることができたのは今回の旅行のハイライトになりました。魚を捌いた経験のある人ならそれほどのショックは受けないと思いますし、自分で羊の解体をやりたくなります。羊を仰向けに押さえつけ腹の皮を縦にナイフで切り裂きます。その切り口のところから心臓まで手を突っ込んで動脈を引きちぎるのです。そうすると体外に血を一滴も出さずに羊は絶命します。それが苦しまずに殺す方法らしいのです。そして皮を剥ぎ取り、内蔵を摘出します。驚いたのは胃袋です。胃袋の中は草が一杯詰まっており、パンパンではち切れそうでした。モンゴルの草原には約600種類のハーブが自生していると言われています。モンゴルの羊はそのハーブを腹一杯食っているのです。


 モンゴルの羊は大草原でのんびり暮らしています。そして毎日、ハーブの草を腹一杯食べているので、その肉は絶品です。コクとしっかりした歯ごたえがあり一度食べると病みつきになります。モンゴルのガイドさん曰く「日本の羊の肉は肉じゃない」そうです。モンゴルでは毎日三度三度、羊料理が出ました。美味かったのですが、日本の肉のように柔らかくはありませんのでアゴがくたびれました。
 ところで、モンゴルの人は昔から飢えを知らないと言います。どんな貧乏な人でも羊の肉だけは腹一杯食えるからです。言ってみれば食い物(羊)はそこら中にいつも転がっておるわけです。モンゴルの人たちがガツガツしていないのは大量の羊の群れとすがすがしい空気と雄大な草原のせいでしょう。