禁錮6日目

 朝6時起床。薄曇り。薄ら寒い。
 
 本断食4日目。朝、起きた時がつらい。体がふらつく。立ち上がったり、歩き始めたりするときは、ゆっくりしなければならぬ。……というより、早く動けない。動作は老人のように緩慢だ。廊下や階段には「めまいのときは、すぐにしゃがむこと」と書いた紙が貼ってある。なるほど、めまいはあり得る。
 
 午後からは快調である。
 
 シャワー室に全身を写す鏡がある。自分の体をみるとさすがに痩せた。特に腹がペチャンコになった。まるで高校時代のときの体型だ。
 
 断食というのは自分で自分の体を食っているのと同じことだ。断食によって体内に一切、栄養分が入らないのであるから、生体は体内のどこかから養分を探し出さなければならない。それにはまず、生命維持に絶対必要なもの以外から養分を取り入れ、エネルギーに変えるはずだ。よって余分な脂肪や血管内の余分なコレステロールが消費されるのであろう。体の中に余分なものがあるうちは、それを食って生きていけるわけだ。自分の痩せた姿を見ているとまさしく自分で自分で自分の体を食っているのだということがよく分かる。
 
 身体には60兆個の細胞があるという。この細胞が断食によって栄養分の補給が絶たれるのであるから悲鳴をあげるはずだ。飢餓により60兆個すべての細胞が覚醒することを期待して断食を始めたわけだ。……だが、まだ60兆個の細胞が悲鳴を上げている感じはしない。心身改造とは60兆個の細胞をすべて目覚めさせることだ。そうなれば、私は“変身”する。