禁錮2日目

 朝、6時起床。“せんべい布団”に“すきま風”。春とはいってもここは山の中だ。夜は冷える。昨夜は寒くて眠れなかった。部屋にはエアコンはない。冬や夏でなくてよかった。季節のよいときでなくてはここで断食はやれたものではない。
 
 部屋はボロボロだが景色はよい。窓の外は桜が満開だ。手を伸ばせば桜に触れることができる。そこにウグイスが来て鳴いている。梅にウグイスではなく桜にウグイスだ。快晴である。
 
 今日はまだ予備断食の日なので、朝7時に食事が出た。おかゆ一膳とみそ汁だけ。食事はオバチャンが部屋まで持ってきてくれる。
 
 午前9時から院長先生の健康講座放送が流れる。部屋で聞く。どんな格好で聞いていてもよい。今日は「人間に備わる自然治癒力」の話であった。全部で25項目あるらしい。
 
 10時から自由時間。庭が展望台を兼ねている。そこから生駒の町と奈良市が一望できる。絶景である。暖かい春らしい陽気だ。空気がやわらかい。タバコを吸えるのがまたよい。原理主義的でないのがよろしい。断食中は禁煙という道場も多いが、ここではそんな窮屈なことは言わない。庭で60代の男性の受刑者(?)と歓談。禁煙を目的に入所したとのこと。禁煙パイポをもらった。
 
 近くにある宝山寺まで散歩をする。歩いて2分。新緑が目に鮮やかだ。宝山寺というのは商売繁盛を祈願してお参りに来る人が多いらしい。神様から仏様その他いろいろ祀ってある。いったい何がご本尊かわけが分からない。全部拝めば何かに当たるのだろう。ウィークデイのせいか、人影はまばらだ。関西のオバハンが数人、大声ではしゃぎながらお参りしていた。関西のオバハンは元気がよい。


午後3時入浴。一人ずつ入る。いい湯加減である。「極楽、極楽」思わず口に出る。入浴は二日に一度だ。シャワーなら毎日浴びることができる。


 午後4時半夕食。お膳にコーヒーカップが乗っていたので、コーヒーのサービスかと思ったが、重湯であった。ごはんつぶがない。こういうのが重湯だったのか。重湯を飲んだのは初めての経験だ。重湯一膳と小さい梅干しが一つだ。予備断食だからこういう食事なのだが、よけい腹が減る。いきなり本断食に進みたい気分である。