確定申告難民

 「先生、確定申告書をチェックしていただけませんか?」と泣きついて来られたお客さんがいた。
日進市にお住まいの方だ。管轄は昭和税務署だ。毎年、確定申告の相談は日進市役所でやっていたらしい。しかし、今回の確定申告では土地の譲渡があったので、日進市役所では相談に乗れない、と断られた。そこで昭和税務署に連絡したら、「確定申告の相談会場は、イオン熱田ショッピングセンター内にあるから、そちらへ行ってください」とのこと。
 イオン熱田ショッピングセンターの特設会場は昭和税務署だけでなく、中川税務署や熱田税務署管轄の納税者すべてここに収容される。大混雑で、大勢の人に酔ってしまい、気分が悪くなってしまった。質問したいことがいくつかあったが、混雑していて、とても質問できるような状況ではなかった。わけの分からないまま、タッチパネル式のコンピュータのところへ連れて行かれ、わけの分からないまま操作をして、申告書を提出してしまった、と言うのだ。
 自宅に帰って、よくよく確定申告書を見てみると多額の税金を支払う羽目になっていた。コンピュータが計算間違いをしたのではなく、本人の入力ミスなのだが、「いまさら取り返しがつかないことをしてしまったのでしょうか」という相談内容だ。日進市から遠方の熱田特設会場まで足を運び、一日を無駄に過ごされたわけだ。「二度と行きたくない。もうこりごりです」と言っておられた。
 当初申告に間違いがあっても、申告期限内であれば「再提出」と朱書きして出し直せばよい。
 チェックしてみると「5千万円特別控除」ができるのに入力されていないのだ。「これじゃぁ、税金は多額になるわな」。住民税も考慮すれば、1千万円も余分に税金を払うような申告書を提出してきたわけだ。あらかじめ予定していた税額より、目の玉が飛び出るような税金になっていたので、びっくりして飛んで来られたのである。
 こういう人のことを「確定申告難民」という。十把ひとからげで処理しようとすると、こういう事態が発生する。まるでナチスユダヤ人をまとめてアウシュビッツ収容所に入れて“処理”するのと同じ感覚ではないか!やり方が乱暴である。もう少しきめ細かい対応をしなければ“確定申告難民”が発生するのだ。
 焦ってのぼせ上がっている人に慣れないタッチパネルの操作をさせることが非常識である。
我々税理士はこういう人たちのために“難民救済”もやっているのだ。