配偶者への居住用財産の2千万円贈与の特例

(Q)私は平成17年4月に夫から自宅の建物とその敷地の贈与(贈与価額2千万円)を受けました。
 その後、すぐにそれを売却して、そのお金で平成17年8月に私の名義で実家の近くで自宅を購入し、現在そこに住んでいます。
 聞くところによると“配偶者への居住用財産の2千万円贈与の特例”は、贈与を受けた自宅については、贈与の翌年の3月15日までに居住の用に供し、かつ、その後も引き続き住み続ける予定でなければ特例の適用が受けられないとのことです。そうであれば私の場合には特例の適用がないことになり、720万円もの贈与税を払わなければいけないことになります。
 前の自宅は既に売却してしまいましたので、今さら贈与登記を元に戻すこともできません。
 びっくりして目の前がまっくらです。


(A)なぜ、贈与を受けた自宅をすぐに売却されたのですか?


(Q)夫が海外に単身赴任することになったので、これを機会に私の実家のそばに住もうと思ったからです。


(A)ご主人が海外赴任されることは贈与の時点では分かっていたのですか?


(Q)はい、分かっていました。


(A)後発的な事由でやむなく売却せざるを得ない状況であれば、特例の適用を受けられる可能性があるのですが……。う〜ん、それでは特例の適用は受けられませんねぇ。
 それにしても、どうしてご主人の名義で売却しなかったのですか?


(Q)主人が海外に行ってしまうと、不動産売却の手続きが煩わしくなるとのことで、不動産業者の方から、売却前に「奥さんに名義を移転しておきなさい」と言われたからです。


(A)それなら、その贈与は真の贈与ではなく単なる名義を借りるために行ったものといえます。実態はご主人が自宅を売却したことになるのです。だから、ご主人の名義で譲渡税の申告をすべきで、平成17年4月の贈与はなかったことになります。
 実際の贈与はご主人に入るべき売却代金を奥さんが贈与を受け、そのお金で平成17年8月に自宅を購入したことになります。ですから、平成17年4月時点の贈与の特例を受けるのではなく、ご主人から自宅を購入するための現金の贈与を受けたということでの特例を受けるべきなのです。


(Q)ということは、贈与税を払わずに済むということですか?


(A)そういうことです。


(Q)でも、そんな都合のよい話が通用するのでしょうか?不動産登記簿にははっきりと主人から私への贈与となっているのです。


(A)税務上は形式ではなく実態で判断することになっているのです。


(Q)でも、わたし、税金のことはさっぱり分かりませんので、税務署にそんなむつかしい話はできません。


(A)税金の知識は必要ありません。ありのままを話せばよいだけです。


(Q)税務署には、怖くてよう行きまへん。


(A)どうしたんですか、急に関西弁になったりして。


(Q)ねぇ、せんせ、一緒についていってぇな。


(A)あなたがご自分で行けばタダで済みます。私が行くとお金がかかりますよ。


(Q)お金なんか、なんぼでも払ろたるがな。贈与税の720万円払うこと考えたら、安いもんやがな。


(A)ほな、行きまひょか。