過小資本税制

 台湾人Aさんは、日本に法人(甲社)を作って貸ビル業を始めた。資金は外国法人B社から借金をして土地と建物を購入した。当然、借入の利息はその外国法人B社へ支払った。こういう状況で甲社に税務調査が入った。


 調査は名古屋国税局の国際分野担当の部門である。いま何が問題になっているかというと、甲社が外国法人B社に支払った利息である。国税局の言い分は甲社が支払った支払利子を損金として認めない、ということだ。


 どういう理屈かというと、外国法人B社は実質上、甲社へ出資しているのと同様である。それを貸付として利息を得ているのは、配当で受け取る代わりに利息で受け取っていることになる。支払利息は損金となるので、日本では税金を取り漏れている。よって、甲社が外国法人B社へ支払った支払利息は損金として認めない、ということだ。……なに言ってるか分かるか?


 税務調査の途中で前任の税理士さんは手に負えないということでうちの事務所へバトンタッチした。国税局はもっともらしい理屈で、法人税を追徴しようとしているのだが、当方はそれに納得せず、膠着状態となっている。


 国税局が上記の理屈で税金を追徴するなら、台湾人Aさんと外国法人B社が特殊関係にあり、意図的に日本で租税回避をしていることを立証しなくてはいけないのだが、「あやしい、あやしい」と言うだけで更正(追徴)しようとしている。


 私は国際分野担当という部署があることを初めて知った。国際分野担当というからには、積極的に海外へ出かけて行って、資料を収集するものだと思っていた。が、しかし、どうも一歩も海外へは出て行かないようだ。まるで“引きこもり”の国際分野担当である。


 国際課税の分野では国と国との税金の取り合いである。だから、外国との間で調査の協力関係ができないのであろう。国税局が海外へ行って反面調査ができない。その調査不足を納税者に押しつけてきているのだ。はなはだ迷惑な話である。台湾人Aさんと外国法人B社は特殊な関係ではないと立証をせよ、というのは無茶な要求だ。特殊な関係だと立証するのは可能でも、特殊な関係ではない、という立証は不可能という他はない。もともと当方の主張を認めようとする気が最初からないのだから。


 国税局は更正(追徴)するつもりでいるようであるが、当方は裁判で争ってでも闘うという意思統一が台湾人Aさんとの間でできている。“来るなら来い”だ。それにしても“いい加減にしてくれ”と言いたい。国税局はまるで請求明細も出さないボッタクリ店ではないか。租税法律主義をどう考えているのだ!


 今まででもこういう無茶な課税が行われていたのであろう。お上のご威光には逆らえないと大半の納税者が諦めていたのである。いくら無茶でも納税者がおとなしく応じてきたものだから、日本の税務当局はそれが習性として染み込んでいる。無茶を無茶とも思わない。国税当局の言うことはすべて通ると思っているようである。


 うちの事務所では記帳代行業務をしていない。ルーティン・ワークがないのでこのような毛色の変わった仕事を受けることになる。だから退屈することもなく楽しんでやっている。