借金返済と相続税

(Q)土地が収用により買い上げられることになりました。その補償金3千万円を賃貸アパートの借入金の繰上返済に充当したいと思っています。しかし、銀行員やハウスメーカーの営業マンは「せっかく相続税の節税のために借金をしたのだから、返済するのはアホだ」と言います。借金を返すと相続税の負担が重くなるのでしょうか?


(A)アホなのは銀行員やハウスメーカーの営業マンです。借金を返済しても相続税が増えることはありません。


 相続税の課税対象は「財産」から「債務」を差し引いた純財産額です。だから、3千万円のお金で借金の繰上返済をしたということは、3千万円の財産が減少して、同額の負債が減少したということです。プラス・マイナス・ゼロということになり、純財産は増減しません。したがって、借金を返済したからといって、相続税の負担が増えることはありません。


 こんなことは小学生でも分かる理屈です。銀行員やハウスメーカーの営業マンのレベルが低すぎるのです。おそらく彼らは「借金をすると相続税が安くなる」と吹聴して営業しているのでしょう。この思い違いから借金を返済すると相続税が増えると誤解しているのです。彼らは詐欺をはたらいているのではなく、徹頭徹尾、誤解しているのです。悪気はないと思いますが単なるバカと言うべきでしょう。


 借金をすることと相続税の節税とは関係ありません。相続税の節税目的で借金をするのはナンセンスですし、また、余分なお金があれば積極的に借金の返済に充当すべきです。


 「子孫に借金を残さない」これはいつの時代にも言えることです。借金を残されて喜ぶ相続人はいません。