「個人」より「法人」が有利は幻想

(Q)昨日、会社をつぶして個人事業になれ、ということが書いてありましたが、個人より法人の方が有利なのではありませんか?


(A)何を有利だと勘違いされているのか知りませんが、世の中は誤解・錯覚で成り立っていることを痛感します。


(Q)税理士さんが税務上、法人の方が有利だと言っておられたのですが……。


(A)それはあなたのことを思って言ったのではありません。税理士の都合でそう言うのです。
 個人事業では確定申告時期(毎年3月)に仕事が集中してしまうことと、顧問料がたくさん取れないことが原因です。
 法人になれば顧問料は個人事業よりたくさん取れますし、決算期を調整することにより仕事の平準化ができるからです。


(Q)それでも税金のメリットがあればよいのではありませんか?


(A)それは昔の話です。昭和40年代や50年代では個人の所得税・住民税の最高税率は8割や9割にもなっていたのです。ですから、個人で儲けた人は次から次へと“法人成り”しました。
 今では個人の所得税・住民税の最高税率は5割です。たとえ個人で多額に稼いだとしても“実効税率”は法人の場合とほとんど変わりません。
 それに法人の場合は法人の利益に対して法人税がかけられ、さらに税引き後の利益を個人のフトコロに入れたときに役員賞与や配当課税で二重に税金を取られるのです。個人の場合は1回限りの税金で終了です。
 また、平成19年度税制改正で、実質一人会社の社長の給料について一部損金不算入という制度が導入され、法人化するメリットが激減しました。


(Q)それでは税務上は法人化するメリットはないということですか?


(A)そのとおり!
 ただし、家族を法人の役員にして所得を分散するという効果はあるのですが。
 それより私が法人化を勧めないのは、事務手続きが面倒くさいことです。個人の確定申告ですらヒィヒィ言う人が多いのです。法人を作ると面倒くささは個人の場合の数倍になります。非生産的な作業に時間を取られてしまい、儲けることができません。“本末転倒”とはこのことです。将来、上場して「六本木ヒルズ」に住みたいのなら話は別ですが……。


(Q)それでは、私は“ヒルズ族”を目指しているわけではないので、個人のまま事業をやることにします。


(A) そうしなさい。
 帳簿をしっかり付けたからといって、儲かるものではありません。几帳面な人ほど儲からないのです。面倒な帳簿付けや決算のことは忘れてガンガン稼いでください。稼いでから税理士を雇えばよいのです。